本記事は、『進撃の巨人』(諫山創著、講談社)の感想記事です。
※ 作品の登場人物や内容に言及があります。ネタバレを含みます。
※ 単なる個人による感想・考察です。
※ 画像は全て 『進撃の巨人』(諫山創著、講談社)より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。
『進撃の巨人』第138話(諌山創、別冊少年マガジン2021年4月号)の感想です。
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エレン復活
先月号ではエレンの進撃の巨人を爆破して終わりかと思っていたけれど、終わりではなかった。
アルミンとの殴り合いが、幼い頃に憧れた「砂の雪原」で。
「本当に地獄が好きなんだなエレン!?」
「いいよ...最後までとことん付き合ってやるよ!」
生き残りエルディア人の無垢巨人化
巨人化ガス発生
ジャンとコニーの無垢巨人化
ジャンとコニーの最期だった。
コニーはいち早く「ラガコ村と同じやり方なんじゃ・・・」と気づけた。彼がここまで生きていたのはこのためだったのか。思考をやめない調査兵団の鑑だ。決して馬鹿じゃない。コニーは、母親、兄弟、村のみんなに誇れる兵士になることが夢だった。世界を救えたのだから十分誇れる。
ジャンは始祖の巨人を倒した。
2人ともあの夜調査兵団を選んだだけの十分な対価は得たのだ。
後のことは仲間に託す、それが調査兵団の最期だからな、と隣に立つジャンとコニーの表情は、絶望ではなかった。俺たちはやれることはやった、と感じてるのかなと思った。
彼らのラストは美しく、誇り高かった。
ガビとファルコ
ガビまで無垢になってる。罪と向き合って苦しんで、森からでようとした子どもの最期。
巨人化能力あったから助かって、なおかつガビを助けられなかったのがファルコにとってつらそうだ。一番守りたかった女の子を守れず自分は生き続ける。ファルコは、自分が無垢化した時は最後まで兄が傍にいてくれたし、ガリアードがその身を犠牲にして戻してくれたけれど、今回の場合、ファルコが死んだらリヴァイ達の戦線復帰も絶望的になるので、ガビの傍にいてやることも、食わせてあげることもできなかったのだろう。
アニ
アニとアニの父親が抱擁しあう直前で巨人化発動。父親と再会して抱き合う直前で絶望のどん底に叩き落とされた。
ピーク
今まで常に冷静で取り乱さなかったピークだけど、現実を受け入れられないレベルで動揺。業が自分にかえってきた瞬間の顔だ。ラガコ村や他の国々に対して同じようなことしてきたわけだから。兵長がピークにお前が一番分かってるはずだと言ったのも、それまでの経緯によるものだろう。ピークも無垢巨人化に参加していたのだ。
リヴァイ
リヴァイ兵長の即決即断。ワインの件で脊髄液を一度でも取り込んだら巨人化は回避できないと知ってるリヴァイがファルコに乗って逃げる人を即座に選んで指示する。
超大型巨人となった進撃の巨人の歯に一本の雷槍を命中させる。
怪我をしていなかったら1人でエレンの首まで巨人をかい潜ってたどり着いて地ならしを止めることもあり得ただろう。
ライナー
ライナーの「俺たちはどうすれば報われるんだ?」も辛そうだ。
マーレ組の中でもアニ、ファルコ、ピークは一応、無垢巨人化前に家族と再会出来たのに、唯一ライナーだけは無垢化した母親を見つける形なので、母との再会が出来てない。
復讐の道具にしていたことを自覚し、反省して心から身を案じていたのに、それをライナー自身が知ることはないのだ。
マーレ人とエルディア人の和解?
良心と理性を持って森を出ようとしていた人々が本能のまま暴れる生命体に無茶苦茶にされた。前話で平和的に終わりそうな雰囲気で、今までで一番最悪の状況になっている。
マーレ人とエルディア人もひとまず落ち着いて、ここから融和の芽が出るかと思ったら、容赦なく巨人になる化け物だと見せられた。
マーレの長官はきっとエルディア人差別をするだろう…。ただでさえ希望がないのにエルディア人に対しても歩み寄ってきてくれたミュラー長官ですら大量の無垢巨人に怯えているのが不穏だ。
ミカサの夢
エレンは地ならしの未来見てるからあんな世界はあり得ないけどミカサはエレンと一緒に居たかったのだろう。並行世界の記憶が流れ込んできている可能性もありそう。
「ロストガール」の展開も妄想絵空事ではなく、存在したどこかのいつかだったのだろうか。
エレンとミカサが、2人だけで寄り添い、暮らす別の未来は、2人が言葉にすれば実現したようにも思う。
「忘れてくれ」のあたりで顔に巨人化跡が出てきたから単なるif記憶でもなさそう。ネームではミカサの理想って書いてあるし、エレンに巨人化跡があるので、エレンが何かしらの力で干渉してるのかもしれない。
エレンの顔に巨人跡がでたタイミングで「いってらっしゃい、エレン」なのは、あのシーンで寿命になったからで、そこを踏まえて現実に戻るのかもしれない。
エレンの髪型を変えたのは、他のキャラを含め、回想での時系列を分かりやすくするためかと思っていたが、地ならしをしたエレンは長髪、逃亡したエレンは短髪という対比のためでもあったのだろうか。
マフラーの呪縛から自分の意志で立つ姿を見せた。
エレン
1話でエレンは「いってらっしゃい」のミカサの理想の未来の記憶を見てるからここまでちゃんと未来視通り。
切る寸前のミカサの表情が美しすぎた。
介錯されるエレンの微笑が辛い。
ミカサはエレンを犠牲にして壁外人類を救ったが、これからどうするのだろう。
ミカサ視点でのラブストーリーとしては美しい結末だった。お前が嫌いだったで終わりじゃあんまりすぎる。
「いってらっしゃい」があったから1話にループするのかも。
歴代壁の王はアッカーマン一族が始祖を倒す未来を予測したから迫害したのか?その場合ケニーを守ったウーリは一つの形で始祖の意志に抗っていたことになる。
始祖ユミル
最終ページに出てきた始祖ユミルが笑顔だった。
ユミルの願望って檻に囚われた豚(エレン)を解放したかったのか?
ユミルを解放したエレンもまた自由と運命(束縛)の奴隷だった。
ラストシーンは奴隷でも誰かに愛され得るというユミルの夢がかなったということなのか。
クルーガーの「誰かを愛せなければ同じことを繰り返す」は、愛の実在をユミルに示すことが必要だったのかもしれない。
エレンにあった選択肢
島民を見殺しにするか
ヒストリアとその子孫を犠牲にして永遠の殺し合いか
人類大虐殺か
いずれにしても地獄のようだ。
最終目的は大地の悪魔の駆逐?
エレンの目的は、あのハルキゲニアの駆逐だったのか?
自由を求めて戦ったというのは、つまり、人類をハルキゲニアの呪縛から解き放つためだったのではないだろうか。
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残り2話でハッピーエンドに向かうものとばかり思っていましたが、まさか更なる地獄になるとは。
前回、このまま地ならしが止まって島の人と生き残った島の外の人たちが仲良く和解するのはご都合主義に過ぎると思っていました。今回は予想以上に辛い展開でしたが、納得感はあります。
諫山先生には、この物語を最後まで余すことなく描き切って欲しいですね。