2019年7月2日火曜日

コレットは死ぬことにした ハデス様の意識考察 Colette Decides to Die

今回は、ハデス様のコレットに対する意識の変化について考察します。

振り返ると、本作では、ハデス様がコレットを薬師として信頼し、やがて、好きになる過程が、とても丁寧に描かれています。決して唐突に恋愛マンガ化したわけではありません。





  • コレットとの出会い。当初、コレットとの間に恋愛フラグを感じさせるような甘さはない。無礼な小娘だと思っている。薬箱を忘れたら「お前はいらぬ」と冷たく叱ったり、ヘラクレスが襲撃した際はケルベロスを優先し、見捨てるなど、コレットの扱いは非情。コレット自身も、自らは冥府の一員でもなく、中途半端な存在と自覚。しかし、それでもめげず心に寄り添おうとするコレットにハデス様も少しずつ心を開き、コミックス1巻最後では、「私の薬師」、「冥府の薬師」と認めるようになる(1話~4話)。
  • コレットの三つ編みを触る。コレットの傷だらけの手を見たときの台詞は、薬師としても認めていることの証左。「冥府の薬師」として信頼するように。頭の固い自分に風穴をあける、「少し面白い」存在と思うようになっている(5話~7話)。
  • 針子ハリーが部屋を出るきっかけを作ったコレットを思い出し、「ふふっ」と微笑む。コレットの顔が見たくなり、デメテルの宴会を抜けて会いに来る。台詞だけきくと甘いが、能面のような、無表情な顔立ちなので、ギャップが面白い。故郷を思い出し涙を流すコレットを軽くハグする(8話~9話)。
  • ゼウス回ではコレットを心配して日中に地上にやってくる(10話~12話)。太陽アレルギーのハデス様にとって、日差しのなかわざわざ出てくるのは相当なこと。
  • バカンスに出かけたアポロンの代わりに天界の薬師を務めることになったコレット。勝手にしろと言うものの、放っておけるほど情が薄くもなく(天界は呪いをかける女神もいるほど実は危険な一面もある。実際、殺されかける。)、加護を授ける。加護の消費により心のバランスを崩し、お風呂に入れられる(13話~15話)。柊曰く、加護を与えるというのは特別なこと。この時点でコレットも特別な存在になっているということ。加護はカロンにも与えられているから、恋愛的な意味での「特別」ではないだろうが、大事な存在になっていることは確か。
  • 夢うつつに、冥王になるために手放したものをコレットが拾ってくれていたことに気が付く。天界時代に愛でた花(黄色い水仙)を探すことをコレットに頼む。遭難したコレットを焦って捜索。黄色の水仙を見ながらかつての思慮の浅い未熟者だった自分について語る(16話~18話)。加護と同じで、コレットは「特別だから」思い出をシェアしている。
  • 微熱を出して少しすねていたが、コレットが白い水仙を贈ってくれて、「お前の方が似合う」と言う(20話)。この時の水仙を枯らしてしまいたくないと思って凍土で氷漬け保存していたことが後に判明する。
  • 母を思い出し、ぬくもりが恋しくなって迷い猫状態となったコレットをハグする(22話)。
  • 助産師の仕事が終わったコレットに微笑んで「おかえり」と声をかける(23話)。ハデス様のなかで、コレットも冥府の一員となっているようである。
  • 久々の休日にコレットと地上の街にお出かけ。ハデス様はコレットに花柄のピアスのプレゼント。コレットが介抱した男の人にしつこくプロポーズされ困惑しているのを見かねて止めに入る。改めて、自分は神、コレットは人間であることを思い知らされる(24話、25話)。
  • 風邪をひいて冥府でしばらく療養することになった酒神・ディオニュソスに「人間とは割り切って付き合わないと、一緒に生きてゆけないことが辛くなる」と言われる。コレットを思い浮かべ、自分の気持ちを「わからぬ」と考えあぐねる(26話、27話)。
  • ディオニュソスの快気祝いで、天界再訪。コレットへの想いを自覚する。コレットに、「また明日」と声がけして別れる(30話~32話)。ハデス様は「寝床の私」が「男の私」になればいいのに、と思っており、コレットが自分に対して時折見せる好意表現が恋愛感情から来るものというよりは、居場所という類のものだということも理解しており、大人だと思う。宴会の際に出てきた女神(名前不明)は元カノだろうか?
  • 往診に来ないコレットを待ちわびる(33話)。
  • 仕事中にコレットのことを考えてしまう。閉廷後、アスポデロスへ散歩。人間だったころの記憶を忘れ始めているアンノと話す。コレットも、いずれ亡くなり、記憶も忘れ、消えてしまうことを思う(35話)。「いまはまだ」と前向きにまとめているけれど、切ないエピソード。
  • コレットに冥府が明るいと言われて「嬉しかった」と言う(37話)。
  • ヘラクレスと旅をしていると聞いて、ヤキモチ(39話)。
  • コツメ修行中、突然倒れる。コレットも帰っていいぞと言うが、その後、「帰ってほしくない」「ここにいてほしい・・・本当は」と枕に顔を半分隠しながら打ち明ける。ハデス様に付き添うため、しばらく冥府に滞在することになったコレットに対して、甘えモードに。隠れ兜で家来たちの様子をのぞくというおちゃめな面も見せる(48話~50話)。
  • コツメハウスに寂しさを感じるコレットが海で「ハデス様に会えますように」と願掛け。コレットに顔を近づけ、キスしそうなところでハッと我に返る。ディオ、ヘルメス、ポセイドンの飲み会に参加し、自分はずるいと思う(55話~56話)。
  • 毎日死者と向き合い、人間の死をたくさん見てきた。コレットもいつか自分の前からいなくなることを考えると覚悟が決まらない(69話)。
  • いつかコレットが自分を忘れる日がきても構わないと覚悟を決め、コレットに想いを伝える(73話)。延々と悩んで逡巡し遂に発せられた、「好きだ」「愛している」という言葉は深いし、尊い。


振り返ると、ハデス様のコレットに対する気持ちの変化は・・・

無礼な小娘
→仕事ぶりは認めている
→冥府の薬師と認める
→頭の固い自分に風穴をあける「少し面白い」存在
→宴会を抜けて会いたくなる「お気に入り」
→天界行きを放っておけるほど情が薄くはない。「特別」な存在
→誰にも見せない心の奥を見せ合う存在
→「好き」
→「愛している」

・・・という感じですね。

そして、ハデス様が恋を自覚した後は、コレットに対する好意がダダ洩れのようです。ガイコツたちも早くから察するほど。気が付いていないのはコレットくらいでしょう。

両想いになった後ですが、ハデス様は「愛しい者は抱きしめたくなる」と言っています(74話)。つまり、これまでコレットをぎゅーぎゅー抱きしめていたのは、決して酔っぱらったとか、病気で弱っているからではなく、コレットを「愛しい」と思っていたから、ということでいいですよね!

コレット17歳、ハデス様はおそらく数百歳。時間感覚も違うでしょう。ハデス様、コレットよりめっちゃ年上じゃん、コレットを恋愛対象としてみることができるのか、と一瞬疑問に思いました。しかし、時間の流れが違うからこそ、ハデス様、今の見た目どおりの精神年齢で、瑞々しい感覚をお持ちなのかもしれませんね。