2020年8月20日木曜日

「神様はじめました」考察 「甘いにおい」 十二鳥居編で描かれたお菓子は何を意味するのか?

本記事は、「神様はじめました」(鈴木ジュリエッタ)の考察記事です。

作品の内容に関する感想を記載するという記事の特性上、ネタバレを含みますので、ご注意ください。

※あくまで個人の感想です。

今回は、十二鳥居編で描かれたお菓子等は何を意味するのかを考察します。


十二鳥居編で描かれたお菓子等


第11巻の十二鳥居編は、巴衛の求婚シーンもあり、人気の高いエピソードです。

ここで描かれたお菓子等は全部で4つあります。

  1. パンの耳
  2. チョコレート
  3. 笹餅
  4. アイスクリーム
よく読むと、このエピソードでは、これらの食べ物が実に象徴的に使われているようです。

子どもの頃に退行した奈々生の話しですから、心情描写は身近な食べものに化体させたということなのでしょう。

深読みすれば、巴衛のいう、「甘い匂い」はダブルミーニングですね。奈々生の匂いもさることながら、このお話しではお菓子がいろいろ出てきてそれぞれメッセージ性がありますよ、ということかもしれません。

それでは順番に見ていきたいと思います。

パンの耳


パンの耳は奈々生が自分の力で獲得した食べ物で、お母さんに上げるために大事に持っている。チョコレートをもらったら、大事そうに鞄の中にしまってる。

パンの耳というのは切り落としただけで手をかけていない素朴なものだけれど、幼い奈々生が食料獲得のためにできる精一杯のことなのです。幼い奈々生から母親への愛情を表現するものでもあります。

チョコレート


チョコレートは、父親が奈々生に渡すもの。

あのダメ父が娘にあげた、もしかすると唯一のお菓子。

奈々生は宝物のように抱きしめている。しかし、借金取りがやってきて地獄を見る。その間、どんどんチョコレートは溶けていく。最後は手から取り落とす・・・そしてチョコレートでべたべたになった手を必死で服で拭う・・・

みるだけでも痛々しい光景ですが、実際にあった出来事というよりは、ろくでもない父親に家族が翻弄され、崩壊していく顛末を暗喩するものかもしれません。

深層心理では今も傷ついてるのでしょうね・・・

笹餅


母親が奈々生に笹餅を食べさせています。奈々生は安心しきった笑顔で笹餅をほおばります。また、母親が死亡した後、小さな手で位牌の前に供えられているのが切ないです。

ここでは笹餅は母親の愛情の象徴であり、奈々生が親世代から承継したもの、いわば無形的な遺産のような位置づけです。

実は奈々生が母方から承継したものは笹餅だけでなく、先祖代々から続く女系・短命・男運の悪さがあり、また、龍王の眼も「神様からもらった美人になる薬」として表現されています。

笹餅は巴衛の好物ですが、この後に続く過去編で、巴衛が笹餅を好きになった理由が明かされます。

巴衛と奈々生の縁は第11巻の時点では想像もつかないくらい強いものだったのですが、笹餅はそれを裏付けるアイテムの一つでもあります(別記事 「神様はじめました」考察 過去と現在をつなぐアイテム:かんざしと笹餅)。



アイスクリーム


子どもの姿の奈々生が見つめ、巴衛が出してやります。
十二鳥居を抜けた後も巴衛が奈々生が本当に忘れているか試すために出してやります。

アイスクリームは、幼少期の奈々生が欲しても得られなかったもの、すなわち、「家族」の象徴です。

ここでは、巴衛と瑞希という二人の神使が奈々生にとっては家族のような存在であること、そして、巴衛との間で将来新たな家族となる可能性を感じさせます。



詳細は別記事にて考察。
「神様はじめました」考察 アイスクリームは何だったのか?家族再構築としての物語

まとめ


本作品では食べ物が意識して描かれています。再読の際は食べ物に注目して読んでます。

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