2020年10月3日土曜日

「神様はじめました」考察 過去と現在をつなぐアイテム:かんざしと笹餅【10月3日更新】

本記事は、『神様はじめました』(鈴木ジュリエッタ著、白泉社刊)を考察するものです。
※ 作品の登場人物や内容に言及があります。ネタバレを含みます。原作漫画を未読の方は本記事を読まないことをお勧めします。
※ 単なる個人による感想・考察です。
※ 画像は全て 『神様はじめました』(鈴木ジュリエッタ著、白泉社刊) より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。

500年前に巴衛が好きになったのは、過去に時廻りしていた奈々生であった。巴衛と奈々生をつなぐ重要アイテムが、かんざしと笹餅である。

かんざし


かんざしは、巴衛が黒麿に契約の際に渡したもので、かんざしを取り戻すことにより呪いを解くことができた。

奈々生が500年前の巴衛にかんざしを渡したのは、奈々生にとっては数日前の出来事でだったが、巴衛にとっては五百年も前の出来事だった。

奈々生から巴衛へ古いかんざしを手渡す行為は、過去と現在が繋がったことを意味する。この時、巴衛は過去に愛した女が奈々生であったと知ったのだ。

(詳細は、「神様はじめました」考察 かんざし関連のエピソードのまとめ

笹餅


巴衛の好物は「笹餅」。最初の出会いの時から笹餅を好物として食べている(第1巻第2話)。また、現代で神使の巴衛がはじめて奈々生に「ありがとう」と言ったのは、鳴神編で子どもの姿にされて発熱中の巴衛に、奈々生が笹餅を作った時である。

巴衛が笹餅を好きになったきっかけは、過去に時廻りしていた奈々生が戦神に斬られた巴衛を看病する際、「あの子は笹餅が好きなんです」と言って笹餅を作って食べさせたから。

過去に飛んだ奈々生が笹餅を作って巴衛に食べさせのは、現代で鳴神により子どもの姿にされた巴衛が「笹餅が食べたい」と言ったことを思い出したから。

過去編では、最初、巴衛は「餅などいるか」って言っていて、もともと好物だったわけではないことが伺われる。一方、現代では、好物が笹餅であり、最終巻の時点でも笹餅を食べている。豪華な食事の中でも笹餅に手を伸ばすのだ。

25巻

巴衛と奈々生の過去と現在をつなぐアイテムはかんざしと笹餅だが、結局笹餅が最初から最後まで残るのだ。かんざしは途中でなくなるから。

「記憶はなくなってもそこにある想いは残る」(第11巻)

過去の奈々生の記憶はなくなっても、奈々生への愛は笹餅に対する愛に化体して残ったということなのだろう。

巴衛が「笹餅が好きだ」というのは「奈々生が好きだ」というのと同義である。

ツンデレで、喫煙と晩酌が趣味で何百年も生きている狐の大妖怪が、記憶を失っても、好きな子にもらった笹餅だけは忘れず、ずっと好きだなんて、なんと可愛らしいことだろう。

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また、笹餅は、奈々生にとっては母親が彼女に残した、いわば無形遺産である(第11巻)。奈々生は母親の顔は忘れたものの、母親が作ってくれた笹餅の作り方は覚えていた。

奈々生にとっても、記憶はなくなっても、母親から受けた愛情も母親への愛情も、笹餅に残っていたのだ。

奈々生が母から受け継いだ笹餅。それが巴衛の好物になる。ここでも二人の強い縁を感じさせる。