2020年10月18日日曜日

「神様はじめました」考察 奈々生と瑞希の関係性の本質とは 『桃太郎の鬼退治』

本記事は、『神様はじめました』(鈴木ジュリエッタ著、白泉社刊)を考察するものです。

※ 作品の登場人物や内容に言及があります。ネタバレを含みます。原作漫画を未読の方は本記事を読まないことをお勧めします。

※ 単なる個人による感想・考察です。

※ 画像は全て 『神様はじめました』(鈴木ジュリエッタ著、白泉社刊) より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。



情景から浮かび上がる瑞希の役割


沖縄の海に映る花火


海面=瑞希

花火=巴衛と奈々生

巴衛と奈々生は強い光。反発しつつ混ざり合い、美しく輝く光。強すぎて時に反発し、時に惹かれ合う巴衛と奈々生の恋は夜空に光の大輪を咲かせる花火のようだ。

眩しすぎる光を海面に映すことで眺められるようになるというのは、二人のあり方が痛々しくて、見ていられないからこそ、時に奈々生の心を支え、慰め、巴衛が奈々生の心を無視した暴走をしないよう見守る瑞希のあり方そのものである。

また、花火は一瞬で消える。巴衛と奈々生の恋愛関係に内在する危うさを暗示するものでもある。第三者の仲介・仲裁・支えがなければ継続しないという関係性は、脆い。

さらには、花火は、一瞬にも思える刹那に美しく輝く人間の生き方そのもの。恋の成就にあたり、二人で人間になることの暗示でもある。


黄金の湖

瑞希(黄金の湖)は心地よい一体感を感じられる相手であり、最終的に還る場所である。

黄金の湖を見て癒される奈々生の姿は、直後に瑞希に大好きと言って、瑞希に心が癒される奈々生の姿と重なる。

⇒ 奈々生は巴衛を連れて瑞希のところへ還る。


龍神の羽衣をまとって火の山へ向かう奈々生

火の山=巴衛

・・・巴衛(火の山)は奈々生に対して熱い想いをもって求めている。

龍神の羽衣=瑞希の支え

怖くても巴衛を心配して「勇気を出して前へ進め!」と言って瑞希からもらった龍神の羽衣をまとい火の山に入っていく奈々生の姿

⇒ 巴衛を思いやり、瑞希に支えられながら、巴衛に手を差し伸べ続け、彼の心の中に飛び込んでいった、作中における彼女の姿そのもの


傷ついた怪鳥を手当てし、飛び立つのを見守る瑞希


傷ついた怪鳥=奈々生

傷ついた怪鳥を手当てする瑞希=巴衛との恋に傷ついた奈々生の心を支え、守り、飛び立てるようになるまで見守り、見送る

瑞希が心配していたのは二人の関係に内在する危うさにより奈々生が傷つくこと

奈々生は能天気というのは巴衛のデリカシーの無さ。一連の行為に傷つかないわけがない。


奈々生と瑞希の関係性の本質は


これまで考察した通り、巴衛と奈々生はお互い傷つけ合うのに求め合うという関係性である。巴衛の自由への強い欲求と奈々生の強い意思は、それぞれが強いが故に、ぶつかり合い、時に混ざり合い、美しく輝く。まさに夜空に光り輝く花火のようなあり方だ。

それをミカゲや瑞希が中和していたのだ。瑞希は奈々生を癒し、ミカゲは巴衛を癒すことで。

(詳細は、「神様はじめました」考察 「三つ巴」から「話し合い」へ

しかし、いつまでも第三の力に頼っている状況では、二人の恋が成就しない。誰かの助けを借りないと継続できないようでは、自立出来ないからだ。だからこそ、巴衛はミカゲと、奈々生は瑞希と、それぞれ一旦離れて、「言葉」によりお互いの相互理解を深める道、即ち「話し合い」を選ぶのだ。

即ち、彼らが結婚してミカゲ社を出る意味は、

巴衛のミカゲからの自立であると同時に

奈々生の瑞希からの自立でもある

つまり

奈々生との恋に傷つく巴衛をミカゲが癒し、

巴衛との恋に傷つく奈々生を瑞希が癒していたという関係。

それぞれがそれぞれの保護者だったのだ。


奈々生が瑞希に「帰ってくるよ 瑞希を安心させるぐらい私がずっと強くなったらその時に」(第25巻最終話)という奈々生の言葉の意味は、瑞希による支えがなくても心身ともに健やかに生きられるようになることだろう。

命を簡単に投げ出さない、巴衛と絆を深めて傷つけ合わないようになる等


第25巻最終話


社への帰還は、10年間で二人がそれぞれ成長し、絆が強まったからこそ還るのだ。

瑞希はお母さん(または保護者)


黄泉で、奈々生は瑞希のお母さんみたいに思っちゃうと言っていたけれど、本質的には逆であろう。

おそらく、瑞希が奈々生に対して果たした役割の本質は、「お母さん」だったのだ。

想うだけで温かくなれて、伴侶よりも1番で、でも恋じゃないという存在は、人間本意に例えると「子ども」だ。

また、「奈々生ちゃんは強くなったよ 最初にあった時よりもずっとずっと」と言葉をかけ、奈々生の神としての成長を認め、夜鳥と対峙する奈々生に勇気を与えた(第21巻)。

第21巻第121話


わが子の成長を認め、喜ぶ親のようではないか。

魂の双子とかお兄ちゃん的立場なのかもしれないけれどいずれにしてもななみにとって保護者であることは間違いない


十二鳥居の、お嫁に行かないで僕の神様で居てねというのも、子どもを溺愛する母親のようだ。

『桃太郎の鬼退治』から浮かび上がる関係性の本質


物語のラスボスは夜鳥(煌かぶり成分)。狙われていたのは巴衛である。(詳細は、「神様はじめました」考察 夜鳥の企み③ 美のカリスマ「煌かぶり」の芸術活動 狙われたのは巴衛 『桃太郎の鬼退治』

奈々生・巴衛・夜鳥の関係性を表すならば、「桃太郎の鬼退治の男女逆転バージョン」だ。

桃太郎=奈々生

お姫様=巴衛

鬼=夜鳥(煌かぶり成分)

奈々生の式神の護も猿

鬼にさらわれたお姫様を桃太郎が助ける話し。

=夜鳥に狙われた巴衛を奈々生が助ける話し。


桃太郎の鬼退治関連エピソードで言えば、奈々生が桃太郎、巴衛が姫だから、瑞希は「おばあさん」なのかもしれない。

作中彼が持ってきた様々なアイテムが「きび団子」だ。

(彼がもたらした浄化アイテムの詳細は、「神様はじめました」考察 聖神使・瑞希の役割とは 浄化アイテムをもたらしたエピソードのまとめ


雪路の嫁ぎ先が「小石川」

⇒ 奈々生の系譜が小石川由来

= 桃が川から流れてくる


闇夜の穢れ夜鳥(鬼)に取り憑かれた(連れ去られた)巴衛(姫)を浄化する(助け出す)為に、奈々生(桃太郎)が瑞希(おばあさん)に渡された数々のアイテム(きび団子)を活用して(自分の能力強化、仲間を得る)、穢れを祓う(=鬼退治)


最後に社に帰るのは

鬼からお姫様を助けた桃太郎がおじいさん、おばあさんの待つ家に一緒に帰り、末長く幸せに暮らしましたとさ。

めでたしめでたし…

だろう。


鬼退治エピにまつわるキャラの関係性は、鏡のように男女が反転した世界なのだ。

対の姿をとる黒麿が関係性を読者に教える役割を担うのだ。

最終的に悪羅王が女の子に転生するのも、彼が姫の妹分だからだ。