2020年10月12日月曜日

「神様はじめました」考察 名前③「俺は言ったのだが」 巴衛が以前にした求婚とはいつか? なぜ奈々生は十二鳥居の求婚を覚えていないのか?

本記事は、「神様はじめました」(鈴木ジュリエッタ)の考察記事です。

作品の内容に関する感想を記載するという記事の特性上、ネタバレを含みますので、ご注意ください。

※あくまで個人の感想です。



巴衛が以前にした求婚とはいつか?


巴衛が沼皇女の前で奈々生に求婚する直前、「俺は言ったのだがこいつは覚えていないのかもな」という台詞がある(第25巻)。けれど、実は巴衛がそこでいう前にした求婚がいつのことを指すのか、作中ではっきり説明はされていない。

作中で描かれた、求愛、求婚シーンは複数ある。巴衛は、言葉でも行動でも、時代を超え、何度も奈々生に対して求愛、求婚しているのだ。そもそも、巴衛自身は自覚していないのが、巴衛の一連の行動は、「奈々生にお嫁に来てもらう」ことが目的だったので、求愛なのか求婚なのか、判然としない。(別記事 「神様はじめました」考察 物の本質をみるということ③「俺の中の奈々生」とは 十二鳥居エピソードの位置づけ、「神漫画」であることの意味

  1. 第11巻、十二鳥居にて。現代の巴衛から小さい奈々生に言葉で。「ああ好きだとも これでお嫁に来てくれるかい」
  2. 過去編、過去の巴衛「お前が なにより 愛しい。そばに いてくれ」
  3. 過去編ラスト、現代の巴衛が奈々生にかんざしをわたす行為(関連記事 巴衛と奈々生の愛情表現の違い 再びかんざしを渡した行為の意味とは?「当然だ」発言の真意は?(第101話))。
  4. 悪羅王編、球根の花を咲かせる。・・・球根(きゅうこん)=求婚(きゅうこん)ととらえられることもできる。二人が結婚する前提として、巴衛が人を受け入れる必要があったからだ。ただ、さすがに当時の状況から見て、巴衛自身は求婚のつもりはないだろう。
  5. 24巻最後のエピソード。「お前が金銭に憂いていれば俺が賄うだけのこと 夢を見たいなら見せてやる だから望む人生を歩け どこだろうと隣には俺がいる 俺の夢はお前を世界一幸せにすることだ」(第24巻第143話より)・・・この回は十二鳥居編の高校生奈々生版である。奈々生を笑顔にするために巴衛があれこれ手を尽くす話であり、言動の本質がほぼ一緒だ。巴衛のモノローグはないが求婚のつもりだった可能性がある。奈々生はよろこんでるけど求婚だとは受け止めていない。「そんなのもうとっくに叶ってるよ」と答える。そのときの巴衛の表情がみえないので、巴衛の真意は読み取りがたい。⇒これは求愛であっても求婚ではないと整理したい。
  6. 25巻、沼皇女の屋敷で。巴衛から奈々生に言葉で。「俺と結婚してくれ 奈々生」

上記の求愛・求婚のうち、本ブログでは、以下の通り整理した。

巴衛が奈々生に求婚をしたのは全部で4回である。そのうち、3回はNGポイントがあったので実らなかった。

500年前・・・奈々生の名前を呼んでいない

十二鳥居編・・・奈々生が巴衛の名前を呼んでいない

過去編終了時・・・言葉が伴っていない

最後・・・奈々生の名前を正しく呼び、「言葉」で伝えた

そして、巴衛が沼皇女の前で奈々生に求婚する直前の「俺は言ったのだがこいつは覚えていないのかもな」という台詞がある(第25巻)がさす「前にした求婚」は、十二鳥居での求婚を指すのだろう。

第11巻第62話

「ああ好きだとも これでお嫁に来てくれるかい」という台詞は、奈々生がのぞむ、はぐらかさない、言葉でのはっきりとした求婚である。

だからこそ、このとき、小さい奈々生は「いいよ」と答えており、奈々生と巴衛の結婚の意思が通じあっている。

つまり、一旦、婚約が成立したのだ。

しかし、十二鳥居編では奈々生は巴衛を「おにいちゃん」と呼んでおり、「巴衛と奈々生」の関係が存在しない。すなわち、婚約が成立したのは「おにいちゃんと奈々生」の間でなのだ。

第11巻第62話

だから、鳥居を出て、「おにいちゃんと奈々生」の関係が解消されたので、折角の婚約も無効になってしまったのだ。

「忘れた」というのはそういうことである。

巴衛は自分の名前を名乗るべきだったのだ。実は瑞希は小さい奈々生に対して自分の名前を名乗っている。

「僕だよ僕 君の第一の神使 瑞希だよ!」(第11巻第62話)

ここでも、神寄りの瑞希とそうではない巴衛の対比が浮かび上がる。瑞希は言葉の大切さを理解しているから自分の名前を伝えたのだ。

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言葉を大事にする世界観では、求婚は「言葉」で伝えなければならない。
また、相手の「名前」も正しく認識していなければならない。関係性構築の第一歩だからだ。

現代の巴衛から現代の奈々生に対してなされた最後の求婚が、言葉で、かつ、奈々生の名前をきちんと呼ぶ
「俺と結婚してくれ 奈々生」
という台詞である。

だからこのときに求婚に成功したのだ。