2020年10月16日金曜日

「神様はじめました25.5公式ファンブック」描きおろし漫画「その後の2人」の感想

本記事は、『神様はじめました』(鈴木ジュリエッタ著、白泉社刊)を考察するものです。 
※ 作品の登場人物や内容に言及があります。ネタバレを含みます。原作漫画を未読の方は本記事を読まないことをお勧めします。 
 ※ 単なる個人による感想・考察です。  
※ 画像は全て 『神様はじめました』(鈴木ジュリエッタ著、白泉社刊) より引用させていただき、個別に巻・話を表示しております。



神様はじめました25.5公式ファンブック」では、最後に描きおろし漫画「その後の2人」(32ページ)が収録されている。


25.5公式ファンブック


概要

巴衛と奈々生が結婚して二人でミカゲ社を出てから「もうすぐ10年」という設定だ。

時期的には、第25巻最終話で二人が生まれた子どもと一緒にミカゲ社に帰還する前である。

綺羅羅(きらら)(転生した悪羅王)と巴衛、奈々生は遊園地に遊びに行く。かつて奈々生が巴衛と一緒に観覧車に乗った遊園地である。


落ち着いた巴衛と奈々生


冒頭、巴衛が奈々生を起こすシーンからスタート。巴衛は相変わらず細かくてきっちりしている。

二人とも寝るのが遅かったという会話。深読みすると、前夜は甘い夜を過ごしたのだろう。
巴衛がさりげなく奈々生のワンピースの背中のファスナーを上げてあげるところにドキドキした。10年経ってもラブラブのようだ。

奈々生の雰囲気は、高校生の奈々生と比べて、随分変わっていた。物語の冒頭と終盤を比べても相当変化したが、10年という歳月の経過が更に彼女を変えたようである。

奈々生は随分と大人びており、落ち着いていた。すっかり大人の女性になっていた。

外見、雰囲気も、別人のようである。雪路とも、奈々生の母親とも違う。奈々生だと言われなければ別人だ。

「能天気」だった彼女の面影は、笑顔にしか伺えない。そこが彼女の「本質」だからだろうか。

一方、巴衛のほうは人間になって10年経過したはずだが、それほど変わらないようにも見える。

巴衛は人間になっても奈々生を大事にしていた。


幸せなのに心配している奈々生


楽しい遊園地のはずだが、奈々生の気持ちはどこか沈んでいる。

奈々生は、人間になった巴衛が人間になったことを後悔していないか、心配しているのだ。

楽しかった過去の思い出(観覧車にのって巴衛がかんざしをくれたとき)を振り返り、今の巴衛がどう感じているか悩んでいる。

あんなに深く結ばれても、奈々生が心配していて、能天気に幸せムード満開、ではないあたりが深くささる。

やはり、奈々生の心の底には、あの孤独で小さな女の子が隠れていて、たまに出てくるのではないだろうか。

そんな奈々生の言葉に乗せない不安を、巴衛は見抜き、「言葉」でフォローしている。

巴衛は人間になって「もう永遠に独りじゃない」「幸せだよ」と言ってあげるのだ。

人間の「心」の機微をほとんど理解していなかったあの巴衛が、ここまで気遣いのできる大人の男性に成長していて、衝撃を受けた。

巴衛にとっては恋の成就とは「共に生きること」だった(第25巻)。まさに、そのことが凝縮されているエピソードだ。きちんと結婚した後の二人の様子を描いてくださって、良かった。

「巴衛は巴衛のまま」


「巴衛は巴衛のまま」というのはどういうことだろうか。

巴衛=狐火=狐(器)+火(本質)

「巴衛は巴衛のまま」というのは、つまり、器が「狐」から「人間」に変わっても、巴衛の本質は、「火」=「熱い想い」のままである、ということだろう。

「狐」がもっていた、葉っぱで外見(器)を変化する能力の代わりに、

「人間」がもつ、環境の変化にも対応し得るしなやかな心(=「本質」を変える能力)を手に入れた巴衛は、

作中で獲得した「一時の感情に流されない心」即ち、自制心(自分の中の「水」)とともに

「荒ぶる火」から「自由な火」に転身したのである。


同じ目線でみるとは


どんなに近い距離にいて想いあっててもそれまで経験してきたことが違う以上、全く同じ目線になることはなくてすれ違ってしまう。でもそこで投げださないで思いやるってことが大事だと改めて感じた。

思えば最初の草むしりエピソードからはじまって、巴衛と奈々生の先行きはそれぞれの理解を深める旅でもあった。


新しい生命が宿るのは


最終巻である第25巻では、奈々生が妊娠し、男の子を出産した。

第25.5巻で描かれた後日談では奈々生の妊娠している様子はないから、時間軸としては、最終話の前の時期である。

本作品で繰り返し描かれていたのが、「弱くても助け合い、想い合い、次世代へ命を繋ぐ人間の強さ」だった。そういった人間のあり方を巴衛が受け入れていること、そしてその状態で幸せを感じていることを奈々生が実感できたからこそ、新しい命が宿ったのかもしれない。


あみちゃんの恋


あみちゃんはまだ鞍馬を待っている。

奈々生を待つ瑞希


瑞希もまた、奈々生と再会する「その時」が来るのを待っているようである。