2020年9月22日火曜日

銀の海 金の大地(氷室冴子著、集英社)について想うこと

 『銀の海 金の大地』(氷室冴子著、集英社)について想うことを書き留めておきます。

昔、『銀の海 金の大地』(氷室冴子著、集英社)という小説がありましてね。未完の作品であり、現在入手も困難の為、勧めにくいのですが、大好きな作品の一つです。


概要

古墳時代の頃の日本を舞台とするファンタジー小説です。古事記にある「狭穂毘古(さほひこ)の叛乱」の物語に前後を付け加え、脚色したストーリーとなっています。 

残念ながら第一部「真秀の章」が完結した後、第二部以降の執筆に入られる前に、作者の氷室冴子先生が亡くなられ、未完です。


作品の魅力

氷室冴子先生の文章は読みやすく、まほろばのまほ、など、大和言葉の使われ方も美しかったです。

作品の雰囲気としては、『なんて素敵にジャパネスク』など、氷室冴子先生の他の作品と真逆のシリアスタッチでした。ヒロインをはじめとして、主要登場人物たちをトラウマレベルの試練の数々が襲います。

そこに息づく少年・少女の姿が瑞々しくて痛々しくて。

登場人物たちの背景や心情がリアルにじっくり描写され、私の隣にキャラクターがいるような感覚に襲われたものでした。

ヒロインの真秀は、瑞々しい。やはり私は闘うヒロインが好きなのです。守られるだけのヒロインには萌えません。

そして、ヒーロー役の少年・佐保彦は、ヒロインに鞭打つというホント最悪な登場の仕方でした。

でも、真秀と佐保彦の二人の恋が好きだったのです。

真秀と佐保彦の二人の行く末が気になって、当時、古事記まで読みました。

古事記の記述通りだとすればおよそハッピーエンドは予想しにくいのですが、結末に至るまでどのようなストーリー展開をされるのか気にしたものです。

真秀の章は序章で、どんどん転生していく壮大なストーリー展開が構想されていたそうです。氷室先生が天国に持っていかれたのですね。切ない・・・。

もう会えないのかと思うと寂しいですね。

また、挿絵も素敵でした。イラスト担当は飯田晴子先生。透明感のある素敵なイラストの数々。佐保彦の、少年から大人へと変わりゆく段階にある美しさに見惚れたものです。


入手は困難

未完ということもあるのでしょうか。『銀の海 金の大地』については、電子書籍化もされていません。入手しようと思ったら紙の本を中古で購入するしかありません。

未完とは言え、第一部は完結しており、ストーリーとしてはまとまっております。

古墳時代の日本のイメージもわきますから、学生さんにも良いかもしれない。

ぜひ電子書籍化していただけないかなと思います。